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くも膜下出血による後遺症と障害年金

くも膜下出血による障害の状態

くも膜下出血とは、脳の表面をおおう膜のひとつである「くも膜」の下に出血がある状態をいいます。原因は、脳の血管のふくらみである「脳動脈瘤」の破裂によることがほとんどです。くも膜は、脳を保護する3層の膜(外側より硬膜、くも膜、軟膜)の一つです。

くも膜下出血は命にかかわる病気です。一命を取り留めたとしても、重い後遺症が残る場合があります。後遺症の例には次のような障害があります。

1.運動の障害

くも膜下出血の後遺症の中で、もっとも代表的なのが、片麻痺です。障害を受けた部分の反対側、右か左かどちらかの半身で麻痺がおきるという症状です。足に麻痺が起きた場合、歩きにくくなり、杖や歩行器、車イスが必要になる場合もあります。手に麻痺が起きた場合、食事が困難になったりします。また、四肢麻痺となる方も少なくありません。

2.言語の障害

左脳の出血により言語に障害が出ることがあります。他人が話すことは理解できるが自分が考えているが、正しい言葉を出すことが出ない場合や、言葉を理解することも話すことも出来ない場合など、その状態は様々です。

3.発声の障害

発声することも困難になるケースがあります。また、上手に飲み込めなくなること(嚥下障害)もあります。嚥下障害をおこすと、食べ物が気管支や肺に入ってしまい、呼吸ができなくなったり、生命にかかわる肺炎を起こす危険性があります。

4.視野の障害

視野が狭くなる、視野の半分が見えないなどの症状が現れます。

5.排泄の障害

排尿をコントロールしている脳の部分が損傷を受けると排泄障害が起こることがあります。頻尿や失禁など症状は様々です。

6.精神の障害

前頭葉や側頭葉に障害が発生すると、人格や精神面に変化が見られるようになり、日常の活動性が低下したり、自分の行動を自制することが難しくなったりします。他人との接触を避け、寝たきりになってしまうケースもあり、うつや認知症になってしまうケースもあります。

 

くも膜下出血で障害年金を請求するときの基準

くも膜下出血による障害については、どこに障害があるのかを見極めた上で障害年金を請求する必要があります。

例えば、運動障害が残った場合について、厚生労働省で定める「認定基準」の肢体の障害という項目に当てはまめて審査されます。

肢体の障害による障害の程度は「上肢の障害」「下肢の障害」「体幹・脊柱の機能の障害」「肢体の機能の障害」に区分されいて、くも膜下出血による障害は、原則的には「肢体の機能の障害」というところで審査されます。肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害(脳血管障害、脊髄損傷等の脊髄の器質障害、進行性筋ジストロフイー等)の場合には、「肢体の機能の障害」として認定することが厚生労働省の基準で定められているからです。ただし、例外的に、肢体の機能の障害が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹及び脊柱の範囲内に限られている場合には、それぞれの認定基準と認定要領によって認定され、肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合であって、上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には、障害の重い肢で障害の程度を判断し、認定されることになっています。

肢体の機能の障害の基準は下記のようになっています。

障害の程度              障害の状態
  1級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
  2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

  3級身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

なんだか漠然としていて分かりにくいですね。

具体的には、肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定することになっています。関節の可動域と筋力はイメージしやすいと思いますが、巧緻性、速さ、耐久性などは分かりにくいかもしれません。例えば、細かな作業ができるか否かとか、できるけど時間がかかるとか、そういった要素も含めて審査が行われるということになります。

また、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定されることになっています。

各等級に相当する程度が例示されています。

障害の程度障害の状態
 1級1.一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの
2.四肢の機能に相当程度の障害を残すもの
 2級1.一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの
2.四肢に機能障害を残すもの
 3級一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの

1級例示にある「用を全く廃したもの」とは、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいいます。

2級例示にある「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいいます。

3級例示になる「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいいます。

その程度が、「関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定」されます。

イメージとしては、1級は片方の上肢・下肢が全廃している場合、2級は上肢・下肢の両方に著しい障害がある場合、3級は労働はできるが軽いものに限られている程度の比較的軽度の障害がある場合と考えてください。

日常生活におけるの動作と身体機能の関連

くも膜下出血による障害年金の請求には、日常生活のおける動作の程度も重要です。日常生活における動作と身体機能との関連は、厳密に区別することができませんが、おおむね次のような動作ができるか否かで判断されます。

ア.手指の機能
(ア)つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)
(イ)握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)
(ウ)タオルを絞る(水をきれる程度)
(エ)ひもを結ぶ
イ.上肢の機能
(ア)さじで食事をする
(イ)顔を洗う(顔に手のひらをつける)
(ウ)用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)
(エ)用便の処置をする(尻のところに手をやる)
(オ)上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
(カ)上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)
ウ.下肢の機能
(ア)片足で立つ
(イ)歩く(屋内)
(ウ)歩く(屋外)
(エ)立ち上がる
(オ)階段を上る
(カ)階段を下りる

くも膜下出血による障害が複数あるとき

くも膜下出血の後遺症は、肢体だけでなく、言語や、高次脳機能といったところに出現することが多いです。

障害が出現している部分が2つ以上あり、日常生活にに支障が出ているようであれば、複数の傷病の診断書を添付して障害年金を請求することができます。障害年金には、複数の障害を併合して審査したり、総合的に審査する方法があるので、併せて障害の程度が診査されます。

ただ、やみくもに沢山の診断書を提出すればよいものではなく、例えば、1つ目の傷病が3級程度、2つ目の傷病が3級程度の状態であったと認定されても、3級+3級=2級となるケースもあれば、3級+3級≠2級のケースもあります。これらの法則は厚生労働省の認定基準として定められています。

くも膜下出血による障害年金請求時の注意点

一定の障害が残った場合は、障害年金の等級に該当することとなり、障害年金が支給されますが、現実は障害状態に見合わない等級と認定されたり、不支給となるケースが多々あります。それは、現状をきちんと記載されていない診断書によるものであることが多いです。

日常生活動作がどのくらい制限されているかも重要な要素ですが、その点が反映された診断書の内容になっているかチェックする必要があります。例えば、日常生活動作を判定する項目は補助用具を使用しない状態で記載する必要があります。しかし、現実には主治医が補助用具を使用した状態で判断しているケースが見受けられます。例えば、肢体に障害が出ていて、杖などを使用している場合、その事実が診断書に記載されているのか、診断書の内容と現状が合致しているのか等をきちんと確認してください。主治医に診断書作成を依頼する場合には、記入方法や現状を正しく伝えることを心がける必要があります。そして、出来上がった診断書がきちんと、現状を表す内容になっているかを確認する必要があります。

また、障害年金請求病歴状況等申立書には、発病から現在までの経過を丁寧に記載していくことも大切です。自分の障害状態をわかりやすく訴えることがポイントとなります。

くも膜下出血による後遺症は、どの部位にどのような障害があるのかを見極めるが難しいと思います。肢体の障害については、どのように不自由なのか、認定基準に該当しそうか、該当しないのであれば、他の障害をプラスして、等級に該当することは可能か、など様々な面からの検討が必要でしょう。申立書の記載方法に悩む方も多く、そのために障害年金の請求が先の伸ばしになっている方も多いようです。

くも膜下出血で障害年金を請求できる日

障害認定日の障害の程度が、厚生労働省が定める障害の等級に当てはまっていることが、障害年金をもらうための要件の1つなので、障害認定日が到来しないと、障害年金の請求ができないことになります。

「障害認定日」とは、基本的には「初診日から16月を経過した日」のことをいいます。

この障害認定日について、脳梗塞・脳出血等の脳血管障害の場合の特例的な扱いがあります。すなわち、脳出血・脳梗塞・くも膜下出血等の脳血管障害の障害年金は、初診日から6ヶ月以上経過した日に症状固定が認められるときは、症状固定日を障害認定日として、16か月を待たずに請求できる場合があります。

6ヶ月未満での症状固定は認められていません。

これは、脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から起算して6月経過した日以降に医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるときに認定されるので、請求すれば必ず認められるものではありません。

主治医が診断書の記入欄に「平成〇〇年〇月〇〇日症状固定」と明記されたとしても、診査を行う認定医が症状固定を認めない場合もあります。

なお、症状が固定していないと認定されて不支給となった場合も、初診日から起算して1年6月を経過する前に症状が固定した場合は、改めてその症状固定した日を障害認定日として認定日請求を行うことが可能です。

ずっと特例的に運用されてきたことなのですが、平成24年9月1日改正の障害年金認定基準で「脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6カ月経過した日以後に、医学的観点からそれ以上の機能回復が望めないと認められるとき」と明文化されています。

1年6月を待たずして障害認定日が到来するということは、障害年金の請求が早くできるということ、すなわち、早目に年金がもらえるということになります。

脳梗塞・脳出血などの後遺症の方にとっては、大切なポイントといえます。

では、主治医が「症状固定」としているにもかかわらず、認定医が「症状固定と認めない」とするのは、どんな場合なのでしょうか。

これに関しては、例示はされていないのですが、機能回復を目的としたリハビリ中である時には、症状固定していないと判断することとされているようです。

主治医が診断書に「症状固定」と記載しながらも、「週に2回~3回通院してリハビリをしている」としている場合もあります。このリハビリが、機能回復のためなのか、現状維持のためのものなのか、主治医に聞き取るなどして「症状固定」状態を書面で伝える工夫が必要になります。

くも膜下出血で障害年金を受給した事例

受給事例を一部ご紹介します。

60代 女性
   傷病名くも膜下出血による後遺症
   経 緯3日間の旅行から帰ってきて、家でゆっくりと過ごしていたところ、立ち上がった瞬間に頭痛が起きた。今までに経験したことのないくらいの痛みだった。近くにいた夫が救急車を読んでくれ、緊急搬送された。10日くらい意識が戻らなかった。
   障害の状態意識は奇跡的に回復したが、自宅で暮らすことが難しくなり、介護施設に入所することになった。リハビリをしているものの、四肢に重い障害があり、移動は車椅子を利用、食事は介助が必要な状態である。
   結 果障害基礎年金1級
   申請方法等リハビリは機能回復というより、現状維持するためのものであることを主治医に確認し、症状固定により初診日から6カ月を障害認定日として請求。上肢も下肢の機能障害があり、1級認定は妥当な結果でした。
50代 男性
傷病名くも膜下出血による後遺症
経緯通勤のため、家を出て歩き出したところ、後頭部を殴られたような強烈が頭痛が起こり、そのまま倒れた。近所の人が妻に知らせてくれ、すぐに救急車を呼んだ。意識が戻らない日が数日続き、くも膜下出血だと診断された。右半身に障害が残った。
障害の状態復帰を目指し、多くのリハビリに取り組んだが、右半身の麻痺が残っている。手は物が掴めないような状態であり、足は補装具がないと歩けない。ベッドから起き上がるのにも時間がかかる。
結果障害厚生年金1級
申請方法等厚生年金加入中であったため、障害厚生年金が支給されました。傷病手当金も受給しており、それとの調整も考えながらの請求手続きでした。請求書類は、診断書内の筋力の記述等も相当であり、日常生活の不便さを強調したことから、早々に1級に認定されました。

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