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ポリオ後症候群(ポストポリオ):症状から申請のポイントまで完全ガイド

 

目次

  1. ポストポリオ症候群とは:幼少期のポリオが引き起こす新たな症状
    • 1-1. ポストポリオ症候群の発症メカニズム
    • 1-2. 特徴的な症状と診断基準
    • 1-3. ポリオからポストポリオ症候群への経過
  2. ポストポリオ症候群の障害年金認定基準
    • 2-1. 等級別の認定基準
    • 2-2. 日常生活における動作の評価ポイント
    • 2-3. 認定基準の実際の適用例
  3. 障害年金申請で押さえるべきポイント
    • 3-1. 初診日の特定と重要性
    • 3-2. 申請書類作成のコツ
    • 3-3. 診断書記載の注意点
  4. ポストポリオ症候群の障害年金受給事例
    • 4-1. 60代男性の受給事例
    • 4-2. 50代女性の事例
    • 4-3. 事例から学ぶ申請のポイント
  5. 専門家に相談するメリット

※本ページに記載している症状等の説明は、障害年金の請求に必要となる一般的な事項をまとめたものであり、すべての方に当てはまるものではありません。記載内容は参考情報としてご利用いただき、実際の症状や診断については、必ず医療機関などの専門機関にご相談ください。


1. ポストポリオ症候群とは:幼少期のポリオが引き起こす新たな症状

幼少期にポリオに罹患し、懸命なリハビリテーションにより社会生活を送ってこられた方々が、中年期に差し掛かった頃、突如として新たな筋力低下や疲労感に襲われるという現象が起きています。これが「ポストポリオ症候群」です。

長い間安定していた身体機能が徐々に低下していくという事実は、当事者にとって大きな不安と苦痛をもたらします。しかし、この症状が障害年金の対象となることをご存知でしょうか?適切な申請により、生活の経済的負担を軽減できる可能性があるのです。

1-1. ポストポリオ症候群の発症メカニズム

ポストポリオ症候群は、ポリオ(急性灰白髄炎)に罹患した後、長期間を経て発症する遅発性の神経筋疾患です。ポリオとは、ポリオウイルスの感染によって脊髄前角細胞が侵され、四肢の急性弛緩性麻痺を引き起こす病気です。一般的に抵抗力が弱い乳幼児の罹患率が高く、脊髄性小児麻痺とも呼ばれています。

ポストポリオ症候群が発症する仕組みについては、いくつかの説が提唱されています。最も有力とされているのは「運動ニューロンの過用」説です。ポリオによって多くの運動ニューロンが破壊されると、残った少数のニューロンが通常よりも多くの筋線維を支配するようになります。こうした過剰な負担が長年続くことで、残存していた運動ニューロンが徐々に機能を失い、新たな筋力低下や疲労などの症状が現れるとされています。

また、ポリオ罹患時に無症状であった部位でも、実はウイルスによって運動ニューロンの一部がダメージを受けており、それが長い年月を経て機能低下につながるという説も提唱されています。

この疾患の特徴として、ポリオからの回復後、少なくとも10年以上(多くの場合は30〜40年)の安定期間を経て、徐々に新たな症状が出現するという点が挙げられます。

1-2. 特徴的な症状と診断基準

ポストポリオ症候群には、以下のような特徴的な症状がみられます:

  1. 新たな筋力低下: ポリオ罹患時に影響を受けた筋肉だけでなく、それまで正常だと思われていた筋肉にも弱化が見られることがあります。
  2. 異常な疲労感: 日常的な活動でも強い疲労を感じ、回復に長時間を要します。この疲労は休息によっても完全には回復しないことが特徴です。
  3. 筋肉痛・関節痛: 特に運動後に悪化する傾向があり、慢性的な痛みとなることも少なくありません。
  4. 筋萎縮: 筋肉の量が減少し、特に手足の筋肉が細くなる現象が見られます。
  5. 呼吸筋の弱化: 呼吸が浅くなったり、息切れを感じたりすることがあります。睡眠時無呼吸症候群を併発することもあります。
  6. 嚥下障害: 飲み込みにくさや、食事中のむせなどの症状が現れることがあります。
  7. 寒冷不耐性: 手足の冷えを感じやすくなり、寒さに対する耐性が低下します。
  8. 睡眠障害: 不眠や日中の強い眠気などの睡眠に関する問題が生じることがあります。

ポストポリオ症候群の診断は、以下の条件を満たす場合に考慮されます:

  • ポリオの既往歴があり、少なくとも一肢にポリオによる弛緩性運動麻痺が残存していること
  • ポリオ回復後、症状が安定していた期間(おおむね10年以上)があること
  • 新たな筋力低下および異常な筋の易疲労性があること
  • これらの症状が他の疾患では説明できないこと

診断には神経内科医などの専門医による詳細な問診と神経学的検査、筋電図検査などが必要となります。他の神経筋疾患や関節疾患との鑑別も重要です。

1-3. ポリオからポストポリオ症候群への経過

ポリオからポストポリオ症候群に至る典型的な経過は以下のようになります:

急性期(ポリオ罹患時): 多くの場合、乳幼児期にポリオウイルスに感染します。発熱や頭痛などの初期症状の後、急速に筋力が低下し、特に下肢を中心とした麻痺が生じます。症状の程度は軽度から重度まで様々です。

回復期: 急性期から数週間〜数カ月後、残存した運動ニューロンが新たな神経枝を伸ばし、麻痺した筋肉の一部が再支配されることで、機能回復が始まります。この時期には積極的なリハビリテーションが行われ、多くの患者さんは日常生活動作の改善を経験します。

安定期: リハビリテーションによる回復がプラトーに達した後、多くの患者さんは10年以上、時には30〜40年にわたり症状が安定した状態を維持します。この期間中、残存した障害に適応しながら、学校や職場、家庭での生活を送ります。

ポストポリオ期(新たな症状出現): 40〜50代になると、徐々に新たな筋力低下や疲労感などの症状が出現し始めます。初期には「年齢のせい」と思われがちですが、症状は進行性であり、次第に日常生活に支障をきたすようになります。

進行期: ポストポリオ症候群の症状は通常、緩やかに進行します。適切な運動管理や疲労回避などの対策を講じることで、進行を遅らせることが可能とされています。

この経過の中で特筆すべきは、ポリオ罹患後の「社会的治癒」という概念です。障害年金制度上では、ポリオ後の安定期間において特に治療することもなく、健常者と変わりない社会生活を送ってきた場合、「社会的治癒」として認められます。そして、後年になって新たに発症したポストポリオ症候群は、元のポリオとは「別疾病」として取り扱われるようになりました(平成18年2月17日の事務連絡により)。これにより、ポストポリオ症候群の初診日は、この症候群について初めて医療機関を受診した日と見なされることになったのです。


2. ポストポリオ症候群の障害年金認定基準

ポストポリオ症候群による症状で日常生活や就労に支障をきたしている場合、障害年金の受給対象となる可能性があります。しかし、どのような状態であれば受給できるのか、その認定基準を正確に理解しておくことが重要です。

2-1. 等級別の認定基準

障害年金は、障害の程度に応じて等級が決まり、その等級によって支給額が異なります。ポストポリオ症候群の場合の等級別認定基準は主に以下のとおりです:

障害年金1級:

  • 身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
  • 具体的には、行動の範囲がベッド周りに限られ、常時の介助が必要な状態
  • 両下肢の機能に著しい障害があり、自力での起立や歩行がほぼ不可能で、車いすの使用が常態化している

障害年金2級:

  • 身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
  • 具体的には、一人での外出が困難であったり、日常生活の多くの動作に支障がある状態
  • 下肢の機能障害により、杖や装具がなければ歩行が困難な場合や、上肢にも障害があり複合的に生活に支障がある場合

障害年金3級(厚生年金加入者のみ):

  • 身体の機能に、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度の障害がある状態
  • 具体的には、就労はできるものの軽作業に限られる、または労働時間の制限が必要な状態
  • 長時間の立位や歩行が困難で、特定の就労環境でしか働けない場合

障害手当金(一時金、厚生年金加入者のみ):

  • 障害の程度が3級に該当しない程度の障害であり、かつ初診日から5年以内に症状が治癒(固定)している場合に支給される一時金
  • 永続的な年金ではなく、一度限りの給付

これらの認定基準はあくまでも一般的な目安であり、実際には医師の診断書に基づく医学的所見と日常生活における具体的な制限の度合いを総合的に判断して決定されます。実際に一人で外出可能であっても、他の要素を考慮して2級に認定されるケースもあります。

2-2. 日常生活における動作の評価ポイント

障害の等級を判断する際に重要となるのが、日常生活における基本的な動作の可否です。ポストポリオ症候群の場合、特に以下のような動作が評価ポイントとなります:

  1. 歩行能力:
    • 補助具なしでどの程度の距離を歩けるか
    • 杖や歩行器などの補助具が必要か
    • 屋外と屋内での歩行能力の差異
    • 不整地や階段での移動の可否
  2. 立位保持能力:
    • 立ったまま何分程度いられるか
    • 片足立ちが可能か
    • 立ち上がりの動作に介助が必要か
  3. 上肢の機能:
    • 物を持ち上げる能力(重量物を持てるか)
    • 細かい手作業の可否(ボタンの留め外し、箸の使用など)
    • 腕を上げる動作(洗髪や着替えなど)の可否
  4. 日常生活動作(ADL):
    • 食事、入浴、排泄、着替えなどの基本的な生活動作の自立度
    • 家事(調理、洗濯、掃除など)の遂行能力
    • 買い物や公共交通機関の利用など社会生活に関わる活動の可否
  5. 疲労の影響:
    • 日常的な活動後の疲労の程度
    • 疲労による活動制限の頻度や程度
    • 休息の必要性と回復に要する時間
  6. 痛みの影響:
    • 慢性的な痛みの部位と程度
    • 痛みによる活動制限
    • 鎮痛薬の服用状況と効果

これらの評価に加えて、ポストポリオ症候群特有の症状である「過用症候群」(過度の使用による症状悪化)も考慮されます。同じレベルの活動でも、健常者より極端に疲労しやすく、回復に長時間を要する点が、障害の評価において重要な要素となります。

2-3. 認定基準の実際の適用例

実際の認定がどのように行われるのか、いくつかの典型的なケースを見てみましょう:

1級認定の例:

  • 両下肢の著しい筋力低下により自力での歩行がほぼ不可能で、移動は電動車いすに依存している
  • 上肢にも強い筋力低下があり、日常生活動作の多くに介助を要する
  • 呼吸筋の弱化により、呼吸機能が低下し、日常的な管理が必要である
  • 極度の疲労感により、一日の大半をベッドで過ごさざるを得ない

2級認定の例:

  • 下肢の筋力低下により、杖や装具を使用しても屋外での歩行距離が100m程度に制限される
  • 階段の昇降が著しく困難で、手すりがないと不可能である
  • 上肢にも中等度の筋力低下があり、重い物の持ち上げや長時間の作業が困難である
  • 日常的な家事や買い物などの活動に大きな制限があり、部分的に介助を要する
  • 活動後の著しい疲労感により、一日の活動量が大幅に制限される

3級認定の例:

  • 下肢の筋力低下により長時間の立位や歩行が困難で、休憩を頻繁に要する
  • 手指の巧緻性低下により細かい作業に制限がある
  • 疲労しやすく、持続的な労働に支障がある
  • 寒冷環境で症状が悪化するため、就労環境に制限がある

ポストポリオ症候群の場合、緩やかではあるものの進行性の経過をたどることが多いため、定期的に障害状態を再評価することが重要です。初回認定後も症状が悪化した場合は、上位等級への変更申請が可能ですので、症状の変化を適切に記録しておくことが大切です。


3. 障害年金申請で押さえるべきポイント

ポストポリオ症候群による障害年金の申請は、いくつかの重要なポイントを押さえることで、年金を受給できる可能性が高まります。ここでは、申請により年金を受給するための具体的なアドバイスをご紹介します。

3-1. 初診日の特定と重要性

障害年金申請において、「初診日」の特定は極めて重要です。ポストポリオ症候群の場合、初診日に関して特に注意すべき点があります。

ポストポリオ症候群の初診日の考え方
平成18年2月17日の事務連絡により、ポストポリオ症候群は元のポリオとは「別疾病」として取り扱われることになりました。以下の条件をすべて満たす場合、ポストポリオ症候群の初診日は、この症候群について初めて医療機関を受診した日となります:

  1. 新たな筋力低下及び異常な筋の易疲労性があること
  2. ポリオの既往歴があり、少なくとも一肢にポリオによる弛緩性運動麻痺が残存していること
  3. ポリオ回復後ポストポリオを発症するまでに、症状の安定していた期間(おおむね10年以上)があること
  4. 主たる原因が、他の疾患ではないこと

この取扱いは非常に重要です。なぜなら、平成18年2月以前は、ポストポリオ症候群の障害年金請求は、20歳前障害による障害基礎年金によるものでした。長年就労し厚生年金を納めていた方が、ポストポリオ症候群となった場合でも、幼少期のポリオ罹患時を初診日として障害基礎年金を請求せざるを得ず、金額的に不利な年金を受給することになっていたのです。

現在の取扱いにより、ポストポリオ症候群が「別疾病」として認められるため、発症時に厚生年金加入中であれば、障害厚生年金が請求できる制度上の優遇が可能になりました。これにより、より有利な年金受給の道が開かれたといえるでしょう。

初診日を証明する書類

初診日を証明するためには、基本的には「受診状況等証明書」が必要です。これは初診時の医療機関で作成してもらう公的な証明書です。しかし、医療機関の廃院や記録の保存期間経過などにより受診状況等証明書が入手できない場合は、以下のような方法で初診日を証明することができます:

  • 2番目、3番目に受診した医療機関の受診状況等証明書
  • 初診時の診察券や領収書
  • 健康保険の受診履歴(レセプト)
  • 市町村や健康保険組合等からの医療費の給付記録

ポストポリオ症候群の場合、初診時には「筋力低下」「異常な疲労感」などの症状で受診し、すぐにポストポリオ症候群と診断されないケースも少なくありません。そのため、他の診断名がついていた場合でも、後にポストポリオ症候群と診断された症状の初診日が重要となります。

神経内科等のポストポリオ症候群の専門医による診断が行われることが望ましいとされていますが、専門医が少ないという現状もあります。診断までの経緯を丁寧に記録し、証明することが大切です。

3-2. 診断書記載の注意点

障害年金の申請には、指定の様式による「診断書」が必要です。この診断書は主治医が作成するものですが、ポストポリオ症候群の場合、特に以下の点に注意が必要です。

診断書で重要な記載ポイント:

  1. 病歴の詳細な記載:
    • 幼少期のポリオ罹患歴とその症状
    • ポリオ後の安定期間(おおむね10年以上)の存在を明確に
    • ポストポリオ症候群の発症時期と初期症状
    • 症状の経過と特に進行性を示す変化
  2. 神経学的所見について:
    • 筋力低下の部位と程度
    • 筋萎縮の有無、部位と程度
    • 反射の亢進・低下の状態
    • 感覚障害の有無と部位
  3. 肢体の障害に関する評価: 認定基準に基づいた適切な評価が必要です。
    • 関節可動域の制限の程度(他動運動の角度を具体的に)
    • 筋力低下の程度
    • 日常生活における動作の制限(歩行、補助具の使用状況など)
    • 起立・立位・歩行能力の客観的評価 など
  4. 日常生活活動(ADL)の評価: 認定基準では、日常生活における具体的な動作の評価も重要なポイントです。
    • 入浴、排泄、食事などの基本的ADLの自立度
    • 家事・買い物などのIADLの遂行能力
    • 屋内外での移動能力(歩行、補助具の使用状況など)
    • 階段昇降の可否と方法 など
  5. 疲労と痛みの評価: ポストポリオ症候群特有の症状として、客観的評価が難しい症状についても記載します。
    • 活動後の疲労の程度と回復までに要する時間
    • 疲労による活動制限の具体的な状況
    • 慢性的な痛みの部位と程度
    • 疲労や痛みが日常生活に与える影響
  6. 検査結果: 客観的な医学的所見として、以下の検査結果があれば記載します。
    • 筋電図検査の結果(神経原性変化の有無など)
    • 筋生検の結果(実施した場合)
    • MRIなどの画像所見
    • 他疾患との鑑別診断のための検査結果
  7. ポストポリオ症候群の診断基準への適合性: 平成18年2月17日の事務連絡で示された条件に合致することを明確に記載します。
    • 新たな筋力低下の存在
    • 異常な筋疲労性の存在
    • 症状の安定期間(おおむね10年以上)の存在
    • 他疾患との鑑別診断の結果

ポストポリオ症候群は、目に見えない症状(疲労感や痛み)や日によって変動する症状が特徴的です。これらの症状は客観的な検査だけでは評価しきれないため、患者の訴えを丁寧に記載してもらうことが重要です。

診断書作成前に、日常生活での困難さを記録したメモを準備し、主治医に提示するとよいでしょう。また、ポストポリオ症候群は専門性の高い疾患であるため、神経内科等の専門医による診断書作成が望ましいとされています。

3-3. 申請書類作成のコツ

障害年金の申請には、様々な書類の提出が必要ですが、中でも「病歴・就労状況等申立書」の作成は特に重要です。この書類では、発病から現在までの経過を時系列で詳細に記載します。

効果的な申立書作成のポイント:

  1. 時系列で明確に記載する:
    • 幼少期のポリオ罹患とその症状
    • ポリオからの回復過程と安定していた期間の状況
    • ポストポリオ症候群の症状が現れ始めた時期とその内容
    • 医療機関を受診するきっかけとなった症状
    • 診断までの経緯
    • 治療の内容と経過
    • 良悪含めた経過を丁寧に記録
    • 現在の症状と日常生活への影響
  2. 具体的な表現を心がける: 「歩きにくい」ではなく「100メートル歩くと足がもつれて休憩が必要になる」など、具体的な状況と制限を記載します。
  3. 日常生活の制限を詳細に:
    • 身の回りのことで自分でできないこと
    • 家事や育児、仕事などへの影響
    • 外出時の困難さ
    • 休息や睡眠への影響
    • 他者の介助を必要とする場面
  4. 就労への影響を具体的に:
    • 休職・退職を余儀なくされた経緯
    • 仕事内容の変更や労働時間の短縮
    • 通勤時の困難さ
    • 職場での配慮事項
  5. ポストポリオ症候群特有の症状を強調:
    • 活動後の異常な疲労感と回復までに要する時間
    • 以前はできていた動作ができなくなった具体例
    • 日によって変動する症状の状況
    • 気温や天候による症状変化

4. ポストポリオ症候群の障害年金受給事例

実際にポストポリオ症候群で障害年金を受給された方々の事例を見ることで、申請の参考になります。ここでは2つの事例をご紹介します。

4-1. 60代男性の受給事例

基本情報:

  • 年齢・性別: 60代男性
  • 傷病名: ポストポリオ症候群
  • 認定等級: 障害厚生年金2級

発症から申請までの経緯: この方は5歳の時にポリオに罹患し、右下肢に軽度の麻痺が残りましたが、リハビリテーションにより歩行能力を回復。特に装具などを使用せず、一般企業に就職し、約35年間勤務してきました。

55歳頃から徐々に右下肢の筋力低下と疲労感を自覚するようになり、歩行距離の減少や階段昇降の困難さが出現。当初は加齢によるものと考えていましたが、症状が進行するため神経内科を受診し、ポストポリオ症候群と診断されました。

診断後も勤務を続けようとしましたが、疲労感が強く、通勤や職場での活動が次第に困難になり、58歳で退職。その後、障害年金の申請を行いました。

障害の状態:

  • 右下肢の著しい筋力低下により、屋内でも杖が必要
  • 屋外では短下肢装具と杖を併用
  • 100m以上の歩行困難で、頻繁に休憩が必要
  • 階段の昇降は手すりを使ってもかなり困難
  • 長時間の立位保持が困難
  • 左上肢にも筋力低下が出現し、重い物が持てない
  • 日常的な疲労感が強く、活動後は長時間の休息が必要
  • 寒冷により症状が悪化し、冬季は特に活動制限がある

申請のポイント: この事例では、以下の点が評価されました:

  1. ポリオ罹患後に安定期間(約40年)があり、その後新たな症状が出現したという経過がポストポリオ症候群の典型的な経過と一致していること
  2. 神経内科専門医による診断が明確になされており、客観的な筋力評価や筋電図検査の結果が診断書に記載されていたこと
  3. 申立書において日常生活の具体的な制限を詳細に記載し、特に活動後の異常な疲労感とその回復に要する時間を明確に示していたこと
  4. 平成18年2月の事務連絡に基づき、ポストポリオ症候群の初診日(56歳時)が正しく特定され、厚生年金加入中の初診であったため、障害厚生年金の対象となったこと

4-2. 50代女性の事例

基本情報:

年齢・性別: 50代女性

傷病名: ポストポリオ症候群

認定等級: 障害基礎年金2級

発症から申請までの経緯: この方は2歳の時にポリオに罹患し、左下肢に麻痺が残りました。成長とともにリハビリを行い、短下肢装具を使用しながらも自立歩行が可能となりました。結婚・出産を経験し、パートタイムで事務職として働いていました。

45歳頃から、それまで問題なかった右下肢にも力が入りにくくなり、両上肢の筋力低下や全身の異常な疲労感も出現。家事や仕事を続けることが次第に困難になっていきました。整形外科や神経内科を受診しましたが、はじめは原因不明とされていました。

48歳の時に大学病院の神経内科を受診し、詳細な検査の結果、ポストポリオ症候群と診断されました。その後も症状は徐々に進行し、特に疲労感と筋力低下が顕著になったため、50歳でパートの仕事を辞めざるを得なくなりました。

この方は幼少期のポリオ罹患時を初診日として障害年金を申請しましたが、当初は認定されませんでした。しかし、平成18年2月の事務連絡を根拠に、ポストポリオ症候群の初診日(45歳時の整形外科受診)を初診日として再申請し、障害基礎年金2級が認定されました。

障害の状態:

  1. 両下肢の筋力低下により、屋内外ともに杖と短下肢装具が必要
  2. 連続歩行可能な距離が約50mに制限され、それ以上は休憩が必要
  3. 階段の昇降は手すりを使ってもかなり困難
  4. 両上肢の筋力低下により、洗濯物を干す、高い場所の物を取るといった動作が困難
  5. 手指の巧緻性低下により、ボタンの留め外しや調理の細かい作業に時間がかかる
  6. 異常な疲労感があり、家事などの活動後は長時間の休息が必要
  7. 筋肉痛や関節痛が恒常的にあり、天候や気温によって悪化する

申請のポイント:

この事例の特徴的な点は、平成18年2月の事務連絡以前に一度申請して不認定となった後、事務連絡を踏まえて再申請し認定された点です。再申請の際に重視されたポイントは以下の通りです:

  1. ポストポリオ症候群を「別疾病」として扱い、45歳時の整形外科受診を初診日とみなしたこと
  2. ポリオ罹患後の安定期間(約40年)と、その後の新たな症状発現という経過が明確に示されていたこと
  3. 複数の医療機関での受診歴を時系列で整理し、初診日の特定に必要な資料を綿密に収集したこと
  4. 診断書において、ポストポリオ症候群の診断基準に合致する症状が具体的に記載されていたこと

4-3. 事例から学ぶ申請のポイント

これらの事例から、ポストポリオ症候群による障害年金申請において重要なポイントが浮かび上がります:

  1. 初診日の適切な特定: 平成18年2月の事務連絡を踏まえ、ポストポリオ症候群を「別疾病」として扱い、この症候群について初めて医療機関を受診した日を初診日とします。特に厚生年金加入中に初診日がある場合は、より有利な障害厚生年金を受給できる可能性があります。
  2. 経過の明確な提示: ポリオ罹患とその後の安定期間(おおむね10年以上)、そして新たな症状出現という典型的な経過を明確に示すことが重要です。症状の変化を時系列で具体的に記録しておくと申請時に役立ちます。
  3. 専門医による診断: ポストポリオ症候群は神経内科等の専門医による診断が推奨されています。専門医が少ない地域では受診が難しい場合もありますが、可能な限り専門的な診断と検査結果を得ることが望ましいでしょう。
  4. 客観的検査と主観的症状の両方を提示: 筋電図検査などの客観的データだけでなく、疲労感や痛みといった主観的症状も障害の評価には重要です。日常生活での具体的な困難さを記録し、診断書や申立書に反映させましょう。
  5. 平成18年2月の事務連絡を活用: 過去にポリオの初診日で申請して不認定となった方や、そもそも申請を断念した方は、事務連絡を踏まえて再検討する価値があります。ポストポリオ症候群の初診日で再申請することで、認定される可能性があります。
  6. 複合的な障害の評価: ポストポリオ症候群では、運動機能の低下だけでなく、疲労感や痛み、寒冷不耐性などの複合的な症状が日常生活に与える影響を総合的に評価することが重要です。これらを具体的に申立書に記載しましょう。

これらの事例は一例であり、同じ診断名でも症状の現れ方や日常生活への影響は人によって大きく異なります。あなたの状況に合わせた最適な申請方法を検討するためには、専門家への相談が有効です。


5. 専門家に相談するメリット

ポストポリオ症候群のような、発症から診断までの期間が長く初診日の特定が難しい疾患では、専門家のサポートが特に重要となります。専門家は、医学的所見だけでなく日常生活の困難さを含めた総合的な状態を審査に反映させるためのサポートを提供してくれます。不安や疑問を抱えながら一人で申請するよりも、専門家のサポートを受けることで精神的な負担も軽減され、より確実な申請が可能になるでしょう。初めての申請はもちろん、更新時や状態変化時にも専門家への相談をおすすめします。


この記事は、三重県津市で障害年金申請サポートを行っている脇美由紀が執筆しました。障害年金の制度や申請方法は変更されることがあります。最新の情報については、お近くの年金事務所や社会保険労務士にご確認ください。

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令和7年度の年金改正について、社会保険労務士及び年金相談員等の専門家に向けて執筆した実務書です。             

「医療・福祉担当者、利用者の
素朴な疑問にこたえる
年金・社会保障ガイド」

 2022年8月 刊行      
年金・社会保障など「お金」に関する内容です。障害年金についても記載してます。             

「夫が、妻が、自分が、親が、   
  まさかのときに備える        知っておきたい遺族年金」

2023年2月刊行。

「実務に役立つ被用者年金一元化法の詳解」

平成27年10月に大改正された
「年金一元化」についての
法令解釈

週刊社会保障
2023年12月18日号

「遺族厚生年金の収入要件」について  執筆               

週刊社会保障
2023年4月10日号

65歳以降厚年加入者の初診傷病と併合認定」について執筆               

「スキルアップ年金相談」

2018年12月刊行。年金相談業務にあたる社会保険労務士向けの本です。一部の相談事例について執筆させていただきました。                

ビジネスガイド
2020年3月号

退職共済年金受給権者の退職後の繰下げ」について執筆               

週刊朝日
高齢者ホーム2018

「年金で暮らせる?老後のマネープラン」
について執筆  

週刊社会保障
2018年6月11日号

死亡後の障害年金の請求
    について執筆          

週刊社会保障
2018年2月19日号

種別変更を伴う退職老齢年金の改定
について執筆             

ビジネスガイド
2019年4月号

ビジネスガイド2019年4月号

障害年金受給権の離婚時の年金分割
について執筆               

ビジネスガイド
2018年1月号

昭和36年4月2日以後生まれの繰上げと在職老齢年金」について執筆               

ビジネスガイド
2017年1月号

「3級の障害厚生年金と老齢厚生年金の調整」について執筆

ビジネスガイド
2016年3月号

「年金一元化と障害厚生年金の保険料納付
要件」について執筆 

ビジネスガイド
2015年4月号

「障害者特例の老齢厚生年金の請求時期について執筆。  

ビジネスガイド
2014年9月号

「遺族厚生年金の加算の特例」
について執筆       

ビジネスガイド
2014年5月号

「退職共済年金の支給開始年齢特例」
について執筆   

ビジネスガイド
2012年8月号

「離婚分割された年金の支給開始時期」
について執筆   

 障害年金支援ネットワーク

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